「あら〜ん、二人とも仲良しねえ」

耳障りなオカマの声が談話室に響いた。

死んだはずの霧のアルコバレーノが帰ってきてからベルはマーモンを自分の傍に置き、片時も離さなかった。

「いい加減離してよ、ベル」なんて大人ぶった台詞を吐きながら、 まんざらでもなさそうにその腕の中におさまる前任が癪に触る。

そんな二人を微笑ましそうに見守るスクアーロ達の視線さえ、フランの神経を逆なでした。


(なんなんですかーイイ歳した大人たちが気持ち悪い)

フランはいつも通りの無表情でベル達の方を見ていた。

(ベル先輩のあほー)




フランだってベルに優しくされたいのだ。

嬉しそうな声で名前を呼ばれたかったし、あのすらりと伸びた腕で抱きしめられたかった。


なのに、ベルはフランでなくマーモンにばかり優しい。

フランのことはいつもカエル、カエルと呼んで名前を呼んではくれないし、 すぐにナイフを投げつけてくる。

マーモンには楽しそうに5円チョコをあげていたのに。

ああ、本当に面白くない。



「そんな甘いものばっかり食べてるから先輩たちは弱々なんじゃないですかー?」

ベル先輩の腕の中でチョコを食べている姿にムカついて挑発してみた。

「なんなら試してみるかい?」

気分を害したように口元を歪ませる前任と見つめあう。

「マーモンはこれでも一流の術師だぜえ」

「金にはうるさいけどな」

「師匠には完敗した挙句、みっともなく逃げ出したって聞きましたけどー」

あのリング戦の話は、骸たちから聞かされている。

特に犬や千種たちからは、どれだけ骸が圧倒的に勝ったかを自慢げに何度も聞かされた。

「うっせーよカエル!!」

「あの時は体力を温存しておく必要があったしね。今戦ったら負けないよ」

「どうですかねー」

師匠はあれでも一流の術師だ。

ただ、そう、ほんのちょっと頭が残念なだけで。

「んだよ、フラン。やけに絡むじゃん」

「ミーはただ事実を言ってるだけですー」



「まぁ!」

何かを考えるように黙っていたオカマが手をパンっと叩き、

「フランちゃんったらマーモンちゃんに焼き餅焼いてるのね!!」

などとぬかしてきた。

頬を染めて体をくねらせているのが本気で気持ち悪い。

「違いますよー。ルッス先輩も気持ち悪いのは見た目だけにしておいてくださいー」

不愉快なオカマの言葉に言い返す。

図星をさされたなんて前任の前では死んでも認めたくない。

言われたルッスーリアはキー、ひどいわ!!と叫び声をあげながらスクアーロにまとわりついて鉄拳をくらっている。

フランが冷たい目でそれを見守っていると、めんどくさそうに頭を掻きながらベルが近寄ってきた。



「なんですかー?堕王子ー」

「堕王子ってゆーな!!」

いつものようにナイフが投げられたと思ったが、それはフランの頭に刺さらなかった。

不思議に思って投げつけられたものを見てみると、手におさまったのは小さなチョコレートだった。

「んなもんで拗ねてんじゃねーよ」



別にフランはお菓子がほしかったわけではない。

そんなもので喜ぶほど子供ではないつもりだ。

でも。



「せっかくだから貰っといてあげますー」

談話室を出て行きながら口にしたチョコレートは、なんだかすっごく甘かった。












 
毒舌蛙の憂鬱

 (なんでミーだけを見てくれないんですか)