「ごめんっ!コンラッド!!」
バキッ
コンラッドが眞魔国に還って来てしばらく経った日のことだった。
セリフを同時にすごく切れの良い左ストレートをコンラッドに放って陛下は走り去って行った。
その場に残されたのは右頬を抑えながら茫然と立ち尽くすコンラッドと逃げ遅れたヨザック、逆光でもないのにメガネを光らせた村田だけだった。
軍人としてはあるまじきほど隙だらけのコンラッドにつかつかと近づいて行った村田は素晴らしくいい笑顔で
「はい、ウェラー卿」
といってある冊子を投げつけた。
「ちゃんと読んでね?」
(怖えぇぇ!!)
自分が言われているわけではないのに直立不動になったヨザックとまだ茫然としているコンラッドを残して恐怖の大賢者様は去って行った。
渡された冊子は見覚えのあるものだった。というより自分が聞き取りから編集までしたのだから忘れるはずもない。
ようやく放心状態から立ち直ったコンラッドがゆっくりと空を仰いだ。
「死のう」
「って、わー!隊長落ち着いて!!早まっちゃだめですって!!!」
「止めるなヨザック。陛下のいない世界なんて生きている意味がない」
「だから落ち着いてって!マジで!!」
「陛下の護衛はお前に任せたぞ。いいか、ユーリに傷一つでも負わせてみろ。必ず地獄から呪い殺してやるからな」
目が本気だった。
この男はきっと殺る。地獄からでも必ず。
幼馴染ならではの確信だった。
「と、とりあえず猊下から渡された冊子!!あれ!!あれ読んでください!!」
ヨザックにうながされてようやくコンラッドがページをめくる。
ユーリに心配をかけた罪は重い。
僕の炎術で丸焼き一回。 ―――フォンビーレフェルト卿ヴォルフラム
今までの功績を顧みても何年かの減給あたりが妥当だろう。 ―――フォンヴォルテール卿グエンダル
魔力がないのが残念ですが、私の”もにたあ”お得な10回分です。 ―――フォンカーベルニコフ卿アニシナ
陛下の半径3メートル立入禁止!!かつ陛下トトの永久欠番ですっっ! ―――フォンクライスト卿ギュンター
1ヶ月間の医療部隊勤務。
1からみっちりしっかりと鍛えなおして見せます。 ―――フォンクライスト卿ギーゼラ
他人を凍らせるギャグ禁止
もし言ったら…刈る。 ―――村田健
などなど、猊下の命令でヨザックが城のみんなから収集した”コンラッドへの罰”が書かれている。
ちなみに最後の二つを聞いたときヨザックは本気で泣いた。あまりにもの恐怖で。
しかし。
自分が考えた罰を告げ帰るときの表情が全員笑みを含んでいたこと、これから帰還を祝うパーティがあること。
陛下が一生懸命、自分の一発で許してやってくれと猊下に交渉したこと。
村田から、たっぷり反省するまで告げないようにと命じられたこれらの秘密をいつこの男に告げようか。
自分だってこの男には随分と迷惑をかけられたのだから多少の意趣返し位は許されるはずだ。
ヨザックは隠しきれない笑みを浮かべながら考えていた。
とりあえず殴らせろ。話はそれからだ
(でも、何よりも…お帰りなさい、コンラッド!!!)